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崎山一葉
こんにちは。HDXセルバンクの動画をご覧いただきまして、ありがとうございます。今回進行を務めさせていただきます、崎山一葉です。どうぞよろしくお願いいたします。さて、第3回目の今回は、少子化対策と不妊治療に関する動画です。本日は2013年から2020年まで内閣官房参与、少子化対策・子育て支援担当を担当されておりました吉村泰典先生にお越しいただきました。よろしくお願いいたします。

吉村先生の専門は生殖生理学、生殖医学、臨床内分泌学で、「生殖医療の未来学-生まれてくる子どものために-」など、生殖医学に関する著書が多数あります。これまで3000人以上の不妊症、5000人以上の分娩など、数多くの患者さんの治療を担当されてきました。本日はどうぞよろしくお願いします。

吉村泰典先生
私は産婦人科医でして、これまで一貫して生殖医療に携わってきました。そうした経験を踏まえまして、2013年から内閣官房参与の少子化対策・子育て支援担当として従事しておりました。また、2007年からは日本産科婦人科学会の理事、理事長、その後、日本生殖医学会の理事長、名誉理事長を務めさせていただきまして、一貫して女性の健康を守ること、子育て支援、こういったことを中心にお仕事をさせていただいております。よろしくお願いします。

崎山一葉
よろしくお願いいたします。やはり日本のみならず、世界でも問題視されていることだと思いますので、いろいろと教えていただけると思います。

それでは早速ではございますが、吉村先生は日本産科婦人科学会をはじめ、政府の内閣官房参与としても日本の少子化対策を牽引してこられたわけですが、その過程には非常に多くの課題があったと思います。また、行政や生殖医療に携わる先生方のご尽力で、新たな希望が見えてきているのかなと思うのですが、その現状はいかがでしょうか。

吉村泰典先生
今現在、皆さんもよくご存知のように、超少子高齢化社会ということになっております。合計特殊出生率というのは、女性が一生の間に産む子供の数を表す率ですが、人口置換水準というものがあります。これは2.07なのですが、2.07よりも低くなると人口が減少してくるということになります。この人口置換水準を切ってから、だいたい50年経っています。

そして最初の少子化対策、エンゼルプランというものができて30年が経過しました。いろんなことを進めてきましたが、2023年の出生数は72万7千人で、出生率が1.20と、これまでで最低になりました。日本の人口はどうなっているかというと、現在、自然減が83万人ということなので、毎年83万人が減少しているという状況です。

エンゼルプランができて30年ということを言いましたけれども、それを基にして、いろんな政策を立ててきました。児童手当というものもありますし、子育てサービスの充実など、様々な経済的な支援を行ってきました。特に2019年には安倍内閣が誕生され、幼児教育の無償化、高等教育の無償化も含めて、こういった支援をしてきましたが、なかなかうまくいっていません。

2020年には新内閣が誕生した時の初めの少子化対策として、不妊治療の保険適用化というようなことも言ってきました。これが少子化対策の役に立つのではないかということで行われていたわけですけれども、昨年、岸田内閣は、2030年までがラストチャンスではないかということで、未来子ども戦略というのを作りまして、年間3.6兆円を投入するということになりました。

そういったように国としても、様々な政策を打ち立てているわけですけれども、菅内閣の不妊治療の保険適用化により、2022年4月から不妊治療の保険適用がスタートしました。2021年に体外受精などを希望する人に対しての助成金を増やしたのです。特に1年間ということでやったびですが、その1年間で9000人、治療を受けたカップルのお子さんが増えました。そして2022年から保険適用になってきたということで、2022年はまだデータしか出ていませんが、7500人ぐらいが増えたということが起こったので、一応、不妊に悩むカップルにとって、こうした迅速な政策というのは、子供さんを増やすという点では役に立ったかなと思います。

こういった今までの現状ですが、この不妊治療に対する保険適用が、今後の少子化対策が回復発展するかどうかということについては、まだ問題なのではないかというふうに思います。

崎山一葉
2030年ってまもなくですからね。目標まで回復できるのかといったところでしょうか。

吉村泰典先生
なかなか難しいのではないかなというふうに私は考えていますけどね。数字的にはちょっと厳しいと思いますが。

崎山一葉
そして今いろんなお話を伺いましたが、世界を見渡した場合に少子化対策が成功している国もあると思います。それらの国では一体どういった社会的政策やサポートが行われているのでしょうか。

吉村泰典先生
ヨーロッパの国々が多いのですが、ヨーロッパの国も、今の日本と同じように1970年から80年にかけて、非常に少子化に苦しんだわけです。例えばフランスとか北欧の国々も、少子化ということが国としての大きな問題になったわけです。

そこで何をしたかというと、男性の育児参加、それから女性が働きやすい環境づくり、こういったことを一生懸命考えました。家族関係社会支出という言葉がありますが、子供関連にお金をどれくらい投入するかということです。そうした国々は、そうした問題が起こった時に、家族関係社会支出のGDP比を3%から4%、多い時は5%ぐらいにしてきたわけです。そして子育て支援、あるいは働く女性に対する支援、こういったことをすることによって、出生率は改善してきたということが欧米では認められているわけです。

しかし、先ほどお話しましたように、日本は、この対策がやはり50年から30年遅れたということがございます。日本も最近になって、若者の雇用形態を改善したり、働き方改革の政策を立てたり、子育て・教育の支援に投資したり、こういうことによって一生懸命やろうとしているという状況です。今まで合計3%で出生率回復をしてきたところが非常に多いということですね。

崎山一葉
なるほど。その中で若い方たちの生活習慣とか意識で、その国と日本の違いってあったりしますか。

吉村泰典先生
やはり若者の意識が変化しているということが非常に大きな問題となっています。10年前であれば、例えば岸田内閣の3.6兆円という子育て支援に対する支援、要するに行政的な支援、こういったものがあれば、回復したかもしれませんが、若者の意識に最近は変化が起きています。

日本においては結婚しないと子供を産まないということでしたよね。ですからヨーロッパにおいては、婚外子と言いまして、結婚していない中でもお子さんを持てるということが非常に多いのです。フランスなどは約50%が婚外子です。日本では結婚すれば子供さんはできるだろうというふうに考えたわけです。若いカップルが結婚しないから子供さんは生まれないのだろうということを考えていたんですけれども、最近では若者の意識に変化が起きているということが見られます。

最近では若いカップルは結婚しても子供を作らないなど、こういうカップルが増えてきているということがやっぱり非常に大きな問題です。10年ぐらい前であれば結婚ということがキーワードだったのですが、最近ではそのことがキーワードではないのではないかという考え方の人が多くなってますね。

崎山一葉
実際に結婚しなくても子供を持ちたいという考えの方も増えたということですね。

吉村泰典先生
ヨーロッパにおいてはそういうことが普通に行われているわけです。ヨーロッパの場合は、結婚しなくても子供を持つということが多々あります。婚外子がだいたい40%から50%の国というのは、出生率が高くなっています。日本のように婚外子が2%という国では、非常に出生率が低くなっているといったことが起こってくるわけですね。

婚外子率が低い上に、結婚したら子供を作らないとなると、もう少子化へどんどん向かうということになりますね。

崎山一葉
そうですか。じゃあちょっとこの意識を変えていく、方向を変える必要があるかもしれませんね。

吉村泰典先生
そうですね。結婚できないので子供が産めないという状況はもう終わっていて、結婚しても子供を産まないカップルが増加してきたということをどのようにして考えていくかということが今後は大切になってくるだろうと思います。

崎山一葉
なるほど。そんな中、日本ではこの不妊治療の保険適用も始まりました。そして、行政の妊活や子育て支援、企業の福利厚生も充実してきているなと感じるのですが、さらに加速させて出生率が回復するような施策って何かあったりしますか。

吉村泰典先生
これは現在においては、日本においては非常に大事なことだと思いますね。やっぱり生殖医療の保険化によって、不妊に悩むカップルにおいては、経済的な負担が軽減されることで、7000人、9000人ぐらいの子供さんが増えているわけですね。現在、卵子凍結に関しては、将来的には保険化されるのではないかという話もあるわけです。

こうして妊娠とか出産、子育て、こうした若いカップルに対する経済的な負担を軽減してあげるということは、若いカップルの希望出生率、何人子供を持ちたいか、こういったものに対して大きく貢献するだろうと思います。

けれども、最近、先ほど言いましたように、結婚したら子供を持つべきだというような考え方をする人は、10年ぐらいで減ってきているんですね。特に女性の場合は、この新しいデータだと、3割強の人が結婚したら子供を持つべきだと考えていますが、6割以上の人が結婚したら子供を持つべきだとは思わないと、今は上回ってきています。

となると、一連の少子化対策で3.6兆円を投入したとしても、若いカップルは本当に子供さんを産んでくださるかどうかということが非常に疑問になってくるんですね。

一例として、最も新しい現状を話しますと、ヨーロッパの国で出生率が回復してきたところの出生率が、このところ下がってきているんです。

崎山一葉
どうしてですか。

吉村泰典先生
それはですね、この数年ぐらいでフランスとかスウェーデンなどは、出生率2.0を達成したんですけど、10年ぐらいで1.6とか、そこまでに低下してきています。何かというと、日本と同じようなことがやはり起こっているんですね。ヨーロッパにおいても、やはり若い世代の価値観、人生観、それから結婚観、こういったものが非常に変わってきているということを考えると、これから先どうやって上げていこうかということを考えると、経済的な支援だけではなくて、この多様性を認めるような意識の改革が社会に起こってこないと、なかなか若者の考え方を変えることはできないんじゃないかなと思うんですね。

例えば現在問題となっているような、選択的夫婦別姓とか、皆さんはあまり馴染みがない言葉かもしれないんですけど、エレクティブシングルマザーというのがあるんですね。これは自らは結婚しないで子供を作って育てるというマザーが増えています。こういうようなものを認めるような社会になっていかないと、現時点での少子化を食い止めることができないのではないかと思います。

例えばヨーロッパの経済的な支援によって出生率は改善したけど、また下がりつつあるということを考えると、我が国においてもそうした多様性を認めるような意識の改革ということが非常に難しいんですけど、必要になってくるんじゃないかなというふうに思います。

そういう意味で、私はいつも言うんですけど、少子化対策の第一歩というのは、簡単なことから言えば、選択的夫婦別姓を認めることだというように私は思うわけです。一番取り組みやすい、すべてそういったところから対応できるところが始まっていくんじゃないかなというふうに私は思います。

崎山一葉
なるほど。この話題はそこに繋がっていくかもしれませんね。じゃあこの一歩が割と大きく動かすかもしれないということですね。

吉村泰典先生
そう、私はですね、選択的夫婦別姓というと、従来のいろいろ家族制度を遵守するという立場の方から反対されることが非常に多いんですけどね、少子化対策の一番初めは選択的夫婦別姓を認めることだというふうに私は思います。こういったことによって、非常に社会形態を柔軟にしていかないと、若いカップルに子供を持ってくださいと言っても、持ってもらえないんではないかなというふうに私は思いますけどね。やっぱり住みやすいとか、生きていきやすいと思わせるためには、いろんな生活のあり方を柔軟に変えていく必要があるかもしれないということだと思います。

崎山一葉
それは大事だと思いますね。どうもありがとうございます。

そして次に、近年、政府や行政が推奨している施策の中に、プレコンセプションケア、通称プレコンというものがあるんですよね。これについて、AYA世代の皆さんにとっては何が有益なのか、具体的にどのようなメリットがあるんでしょうか。教えてください。

吉村泰典先生
少子化対策を考える上においても、心穏やかに産んで、そして安心して子育てに取り組める社会、こういったものっていうのはすごく大事なんですけど、若い世代が子供を作って育てたいと思うような社会を作っていかなきゃいけないんですよ。そういったことで、例えば児童手当とか、経済的な支援とか、保育サービスとか、今行われているような幼児教育の無償化とか、こういったことも非常に大事なんですけど、もっと大事なことに、若い世代のウェルビーイングがあります。ウェルビーイングというのは、心身ともに健康であるだけではなくて、社会的、経済的に満たされる状態ということなんですよね。

このウェルビーイングの確立というものはすごく大事なんですけど、このウェルビーイングの確立と言ってもなかなか難しいところがあります。この確立にとってもっとも大切なものの一つにプレコンセプションケアっていうのも入ると捉えると、ウェルビーイングを非常に考えやすくなるんですよね。

プレコンセプションケアを考えるということはどういうことかというと、自らの健康だけではなくて、パートナーの健康に繋がるし、次世代の健康に非常に繋がるということを含めてですね、パートナーの健康とか、次世代の健康に自らのプレコンセプションというのが極めて大事だということがわかるということです。

となってくると、男女の思春期から、いわゆるプレコンセプションの意識の向上というものがウェルビーイングの確立に繋がり、自ら、そしてパートナーのウェルビーイングの確立につながって、それが少子化を突破する一助になり得るということが考えられるということで、若い世代にプレコンを考えていただくということは、非常に大事なんではないかなというふうに思いますね。

崎山一葉
実際に海外でプレコンが進んでいるというところあったりするんですか。

吉村泰典先生
海外では、欧米を中心にプレコンセプションケアというのが盛んになってますけど、このプレコンセプションケア自体は、そんなに古い概念ではなくて、まだ10年とか15年ぐらいの概念なんですよ。これにおいても、プレコンセプションケアの重要性ということは、認識されてきたばかりなんですね。

プレコンセプションケアを確立することによって、現在、プレコンセプションケアという言葉は、あまり新しい言葉ではなくなってきて、プレコンセプションヘルスというんですよ。ケアではなくて、ケアから一歩進んでヘルスになっているという、これを、子供を育てたいという社会の形成に、非常に私は役立つのではないかというふうに思っています。

崎山一葉
柱が見えているわけですから、それを中心に動いて、しかもどんどん進んでいく必要があるんですよね。こういうふうに名称がどんどん変わっていくのは、成長の証かもしれないですね。ありがとうございます。

それでは最後の質問となります。男性側にフォーカスしたソリューション的なものがほとんどなかったんですが、この度、若い世代の男性を対象にした精子凍結みらいバンクのサービスが始まりました。女性の卵子凍結はある程度普及してきているのかなと感じています。男性にとってのメリットは先日、男性不妊専門医の岡田弘先生にお聞きしたんですが、パートナーの女性にとって精子の機能検査、DFI検査や精子凍結保存は、どのような意味があるものでしょうか。

吉村泰典先生
これは非常に大切なことなんですけど、妊娠するというのは女性であるといったことから、プレコンセプションケアというと、女性のためのものであるというふうな、これまでのイメージですね。近年、このプレコンセプションケアが男性にも大切だということが言われ始めているんですね。

それはなぜかというと、不妊治療が受けられるようになってきて、体外受精を行うと、男性不妊が非常に多いということも分かってきています。喫煙とか肥満とか様々な原因から、30年前、40年前に比べて精子が劣化しているといったデータも出てきているわけです。

さらには、ストレスとか精神的な要因によって性機能障害、セックスができないとか、こういうようなことも起こってきています。それに加えて、日本においては、やはり学校の性教育の貧困さっていうのがあるんですよね。例えば性や妊娠に対する正しい知識が女性のみならず、男性にも徹底していない。男性のマスターベーションに対しても、とにかく大事なことなのに、こういったことを教える機会がないとか、こういうことがやはり私は大きな問題だと思うんですね。

そういう意味で、今回の若い男性を対象とした精子凍結みらいバンク、こういったようなサービスというのは、男性のプレコンセプションケアを大切だと考える上でも、私は非常に重要な役割を果たしてくるんではないかなというふうに思いますね。

女性の将来の妊娠を目的として、東京都などは社会的な卵子凍結といって、卵子凍結がすでに行われてますよね。これと同様に、プライベートバンクでの精子凍結も、私は将来のために考えていくということも極めて必要になっていくんじゃないかなというふうに思いますね。

これまで、精子の凍結ということになると、がん・生殖医療っていうのが行われていたんですよね。男性ががんになった時に、治療する前に精子を凍結保存しておく。これは実際にがんの患者さんによく行われているわけです。これは将来の妊孕性の温存とか、そういったことで精子を凍結しておいて、将来の妊活、妊娠するためにこういった精子を利用するという意味でも必要だと思うんですけど、私は男性も健康な時点で精子を凍結しておくことは極めて大事で、これはやはりウェルビーイングの確立に非常につながってくるであろうし、それはパートナーや子供に対してということにおいても大事ですし、次世代の健康ということを考えるにおいても大切かもしれません。

こうした精子の凍結保存に関して、こういったHDXセルバンクのようなシステム、サービスを使って凍結していくということが、自分自身のプレコンセプションを考えることにつながって、ヘルスリテラシーの向上につながるということが、私は期待されるというふうに思います。

崎山一葉
ヘルスリテラシーの向上、これ、本当に必要なことですね。

吉村泰典先生
それがどうしてヘルスリテラシーの向上に繋がるのかとお考えになる方はいるかもしれませんけど、今日私が話したこと、こういうことを一つ一つ考えるということが、そういうリテラシーには非常に繋がっていくと思います。

皆さんもプレコンセプションケアの一つとして、この精子の凍結も考えていただけると、将来に向けてQOLの改善にも繋がってくるんじゃないかなというふうに思いますね。

崎山一葉
なるほど。ウェルビーイングのためにもなりますし、パートナーの健康のためにもそうですし、次世代、生まれてくる子供の健康を考える上でも、すごく大事だと思いますね。

なるほど。この先のことを考えて、皆さんぜひ一度考えてみてはいかがでしょうか。

吉村泰典先生
そうですね。

崎山一葉
本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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