プレコン健診とは?男女で考える妊活前の健康チェックとライフプラン
プレコン健診
若い男女が将来のライフプランを考える
後悔しないために今やるべきこと
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健康で楽しい人生設計のために
プレコンセプションケアとは、将来の妊娠をターゲットにしたケアを意味しますが、男女ともに性や妊娠に関する正しい知識を身に付け、総合的な健康管理を行うことにあります。妊娠するのは女性であることより、これまで女性のプレコンセプションケアを中心に論述されてきましたが、近年、ブライダルチェックを希望する男性が増えてきており、妊活への意識の高まりもみられています。
男性のプレコンセプションケアの必要な視点に男性不妊症の予防があります。近年精子数の減少が注目され、不妊カップルの約半数に男性側の原因があることも分かってきております。様々な性機能障害の発生には、適切な性教育が行われていないことが大きく関与しています。小児期のプライベートゾーン教育に始まり、思春期前後からの性教育、妊活世代における妊娠に関する正しい知識の普及など、包括的な性教育がプレコンセプションケアには重要となっています。
男性のプレコンセプションケアは、男性自身の健康のみならず、パートナーの健康、妊娠出産、次世代への健康にも重大な影響を及ぼします。男性のウェルビーイング実現のためには、日々の健康管理、生殖機能に影響を及ぼす生活習慣の見直し、妊活を念頭に置いた将来のライフプランの設計が求められます。
未婚化・晩婚化、若者の結婚や出産に関する意識の変化、経済的不安、ジェンダー格差やアンコンシャスバイアスなどを包含する、未曾有の少子・高齢化社会にあって、男女のプレコンセプションケアによる若者の意識の変化がドライビングフォースとなることを期待しています。
若者自身の健康が改善されることで、将来の健康増進につながり、健康寿命の延長さらには次世代への健康にも大きく貢献します。
吉村 泰典 先生
慶應義塾大学名誉教授
福島県立医科大学副学長
元内閣官房参与

プレコンとは?受胎前から始める健康づくりとライフプラン
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プレコンって?
ヒトの病気の発生には、受胎前から胎児期、小児期、青年期を経て積み重なったリスクが成人期に疾病として発現するというライフコースの概念から、「受胎前からの健康づくり(プレコンセプションケア)」という考え方が近年受け入れられてきています。
- プレコンの目的
受胎前からの環境要因や生活習慣を整えることにより、自分自身の健康のみならず次世代の分までもの、一生を通じた健康づくりを行うことを目的としています。
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ライフプランを考えよう
これまで、プレコンのためのライフプランは、受胎に直接かかわる女性を中心に研究・改善・実践が進められてきました。しかし、今後は受胎のためのパートナーである、男性のプレコンに関して有用なことを真摯に実践してゆく時代になって行きます。
したがって、男性の皆様も、プレコンの概念を加えた一段階上のライフプランを作り上げてゆく事が喫緊の課題であるといえるでしょう。
岡田弘 先生
獨協医科大学名誉教授
獨協医科大学埼玉医療センター
リプロダクションセンターGM
泌尿器科専門医、生殖医療専門医
プレコンチェックとは?妊娠前に女性が取り組む健康管理リスト
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プレコンセプションケア健診 (プレコンチェック)
プレコンチェックの目的は、妊娠前の女性やカップルが将来の健康や健やかな妊娠・出産のために今の体の状態を調べることです。今の健康状態を知り、改善することで将来安心して妊娠・出産・育児をするための準備をすることができます。
また妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠可能年齢のすべての女性、そして男性にとっても大切なことです。以下のプレコンチェックシートを参考に、できることから早速始めていきましょう。
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プレコンチェックシート(女性用)
・適正体重をキープする。
・禁煙する。受動喫煙を避ける。
・アルコールを控える。妊娠したら禁酒する。
・バランスのよい食事をこころがける。
・食事とサプリメントから葉酸を積極的に摂取する。
・150分/週運動する。こころもからだも活発に。
・ストレスをためこまない。
・よい睡眠をとる。
・感染症から自分を守る。(風疹・性感染症など)
・ワクチン接種をする。(風疹・インフルエンザなど)
・危険ドラッグを使用しない。
・有害な薬品を避ける。
・生活習慣病をチェックする。(血圧・糖尿病・検尿など)
・がんのチェックをする。(乳がん・子宮頸がんなど)
・子宮頸がんワクチンを若いうちにうつ。
・かかりつけの婦人科医をつくる。
鍋田 基生 先生
医療法人ヒューマンリプロダクション
つばきウイメンズクリニック 理事長・院長、
産婦人科専門医、生殖医療専門医

女性のプレコン健診とは?妊娠前に必要な検査と卵子凍結の選択肢
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プレコン検診 女性
本邦の若者のヘルスリテラシー、特に性や生殖に関するヘルスリテラシーは欧州と比較し顕著に低いとされています。子宮筋腫や卵巣のう腫、内膜症の増悪や性感染症罹患などが将来の不妊症などに関係する可能性があるため、無月経や月経不順、月経痛、不正出血などをそのままにせずにきちんと検査を行い、病気の悪化がないように必要に応じて婦人科医に相談する事が重要です。
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標準的検査項目
・経腟超音波検査:子宮筋腫や卵巣のう腫の診断、卵巣機能の評価に有用です。
・子宮頸がん検診:20歳~30歳代の若年で好発となります。2年に1回の検診が推奨されます。
・血中性腺ホルモン検査:無月経や月経不順の原因検索や卵巣機能の評価に有用です。
・血中坑ミューラー管ホルモン検査:卵巣に貯蓄されている卵の細胞数の推測に用います。
・性病検査:クラミジア感染症などではお腹の中で他臓器同士を癒着させることがあり、不妊症の原因となる可能性があります。
- お勧めの検査
定期的な経腟超音波検査や子宮頸がん検診を実施しすることで妊娠を考える前から自分自身の子宮や卵巣の状況を確認し、ヘルスリテラシーを向上させましょう。
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妊孕性の確保
・卵子凍結:現代では女性の社会進出や生活様式の多様化に伴い、母体の出産年齢は以前と比較し高齢化しています。加齢によって妊娠する力が低下してくることは明確ですので、人によっては高年となってから子供を望んでも不妊症に悩まされることも少なくありません。将来の目標やライフプランを考えるときに、将来のために卵子凍結を行うという選択をすることができます(表1)。

岩端 秀之 先生
岩端医院
聖マリアンナ医科大学
産科婦人科指導医・生殖医療専門医
男性のプレコン健診とは?妊娠前に必要な検査と精子凍結の重要性
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プレ妊活健診 男性
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プレコン健診 男性
妊活前の健康管理は男性にとっても非常に重要です。
健康になる事で精子の状態を改善させ、ひいては子育てにおいても
力強く活躍することができます。
また、さまざまな事でパートナーや家族の力になることができます。
まずは、パートナーと一緒にプレコン健診の受診をお勧めします。
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標準的検査項目
・一般精液検査:
妊孕性の評価に有用です。一般的に2回以上検査することが推奨
されております。
・一般血液検査:
肝機能異常や腎機能異常など早期発見・早期治療・生活習慣の
見直しにつながります。
・血中ホルモン検査:
乏精子症や無精子症などの原因検索や造精機能・男性更年期の
評価に有用です。
・外陰部診察・陰嚢エコー検査:
精巣容積の確認・精索静脈瘤の評価に有用です。
・性感染症検査:
性感染症の中には、男性でも不妊の原因になる可能性があり、
またそれをパートナーに感染させることで妊娠中の胎児の健康に
影響を与えるものがあります。
パートナーと一緒に予防・治療に取り組むことが大切です。
- お勧めの検査
・精子DNA断片化指数検査(DFI検査)【検体:精液】
酸化ストレスなどの影響で精子のDNAが損傷することがあります。
損傷した精子の割合をDNA断片化指数(DFI:DNA fragmentation index)
と言います。
通常の精液検査で異常がない方でも、精子DFIが高い場合では
受精率や妊娠率が低下し、流産率が上昇すると言われています。
- 妊孕性の確保
・精子凍結
加齢により精液所見は、一般的に悪くなることが知られています。
特に男性も35歳以上になると精液所見だけでなく、精子DNA損傷
の割合が増え、「精子の質」が低下すると言われています。
必要に応じて良好な精子を凍結保存することで、将来的な妊孕能
を確保することができます。
また、思春期以降の男性がん患者に関しては、様々ながん治療に
より造精機能を障害されることから精子凍結保存が妊孕性温存
として広く普及してきています。
一般の方にとっても、精子凍結みらいバンク® などのサービスを
利用することにより精子凍結保存がより身近なものになり、
将来的な妊活に対する不安を軽減できるといえます。
岩端威之 先生
獨協医科大学埼玉医療センター
リプロダクションセンター講師
泌尿器科専門医・生殖医療専門医